数理工学 座談会

シンプレクスの強みの源泉であり、社会課題を解決する可能性を持つ。

――数理工学コンピテンシーインタビュー

世の中のさまざまな現象を把握し、課題を解決するため、数学を用いて数理モデルをつくり解を導いていく学問――数理工学を定義的に言えば、そんな風になるだろう。
シンプレクスでは、デリバティブ評価、リスク計量、アルゴリズムトレード、機械学習などのスペシャリストが顧客に高い価値を提供しているが、そのベースとなっているのが数理工学である。数理工学は、紛れもなくシンプレクスの強みの源泉のひとつと言える。
今回、数理工学エンジニアとして、また「数理工学コンピテンシー」という組織で活動を行っている3人に、具体的な仕事の内容や今後の展望などを語ってもらった。

Takuya S.

理工学部数理科学科卒、2010年新卒入社
クロスフロンティアディビジョン所属

Kazuya U.

大学院理学研究科修了、2012年新卒入社(2016年退職、2019年中途入社)
Deep Percept所属

Kazuhiro K.

文学部人文学科卒、2008年新卒入社
クロスフロンティアディビジョン所属

CHAPTER 01 金融工学、アルゴリズム開発、機械学習で使われる数理工学。

Q:「数理工学を使って仕事をする」と言っても、なかなかイメージしづらいものがあります。みなさんの業務の中で、数理工学は実際にどんな風に使われているのですか?

Takuya

私がこれまでやってきたのはキャピタルマーケット、中でも金融工学と呼ばれる分野です。銀行や証券会社が扱う債券や株式、投資信託といった金融商品の価格やリスクを計量、分析して、投資活動に役立たせる領域ですね。
扱う株価、金利などの指標が何十、何百とある中で、お客さんは自分たちが保有している金融商品の価値やリスクがいくらかを日々考えています。けれど、この指標だけを押さえておけば価格が分かるということはほぼない。だからいろいろな情報を、何らかのモデルを使って、金融業務に意味あるものに変換する必要があります。例えば確率微分方程式を使えば、株価が1円上がったら自分たちが保有しているポートフォリオがどれくらい損するか、得するかなどを導き出すことも可能です。そんな風に、複雑な金融業務を支えるための仕組みを数理工学を使って開発しています。

Kazuhiro

私は、機関投資家が機械で自動的に株式売買を行うためのアルゴリズム開発をずっとやってきました。
機関投資家が売買する金額は大きい場合は数十億円という単位になります。そのため、数十億単位の注文を一度に市場に出してしまうと、自身の発注が株価にインパクトを与えて変動してしまい、売買を判断したときの値段よりも相当悪い値段で取引しなくてはならなくなる可能性があります。また、1日のうちでも時間帯によって市場全体で売買される量が違うため、どのくらいの注文量ならインパクトを抑えられるのかという点も気にしなければならない。
だからといって必要以上に長時間に渡って少しずつ発注していくような戦略を取ると、今度は時間をかけすぎることにより株価が大きく変動してしまうリスクもある。そんな中で、発注のインパクトや価格変動などの複数のリスクをバランスさせながら売買するには、過去の取引データを統計的な手法を用いて様々な切り口で分析し、結果として収益がより向上するための戦略を見つけにいく必要がある。それを導くのに数理工学を使っています。

Kazuya

私は今、Deep PerceptというAI専業の子会社で、データ分析や自社プロダクトの開発を行っています。過去には金融機関の口座開設時にスマートフォンで写真を撮り本人認証を行う”Deep Percept for eKYC”の開発に携わっていました。
機械学習では基本的にコンピュータで定義をしておけば、大量のデータを読み込んで解を導いてくれます。ただ、機械学習の世界も数式で表されているので、それに合うように画像やテキストなどを変換してインプットしなくちゃならない。その変換のために、数理工学の要素が必要なんです。また、エンジニアとして機械学習がより良い答えを導き出せるように制御したり、機械学習からの答えを解釈しプロジェクトメンバーに伝えたりしています。その際に、数理工学技術が組み込まれている機械学習の仕組みを理解しておく必要があります。

CHAPTER 02 技術×業務知識×数理で積集合のソリューションを提供できる。

Q:そもそも競合他社にとって参入障壁が高いフィールドでビジネスをしているのがシンプレクスの強み。ズバリ、数理工学はシンプレクスの強みのひとつと言えますか?

Takuya

言えると思います。
金融機関には金融工学を使う“クオンツ”などの専門家チームがいることが一般的ですが、シンプレクスはそのスペシャリストと同等、ときにはそれを超えた専門性でビジネス課題を整理し、価値を提供することができます。我々のビジネス競合であるシンクタンクやシステムインテグレーター、コンサルティングファームといったプレイヤーとは異なる、独自性のあるサービスを提供できていると思います。
例えば、機械学習を使いたいという金融機関のお客さんがいたとします。お客さんの業務に精通していないシステムインテグレーターの場合ですと、せっかく機械学習を使うのですから、「とにかく高い精度を出すこと」に注力するかもしれません。しかし、こういったケースで我々が大切にしているのは「お客さんのビジネス効果を最大化させるために必要なことは何か」を考えることです。そもそも何を達成したいのかという根本的な問いに立ち戻りお客さんとディスカッションすることで、いたずらに機械学習の精度を向上するよりも「業務フローに敢えて“人の手”を組み込むことが重要」という答えに至るかもしれませんし、場合によっては「機械学習を利用しないほうがよい」という提案をすることだってあり得ます。シンプレクスの一番の強みは、技術、業務知識、数理能力の積集合のソリューションを提供できることにあります。

Kazuhiro

ただ、これまでのシンプレクスでは、数理的な強みを包括する概念(組織)が存在しなかった。リスク計量やアルゴリズムトレードなど、それぞれの領域にスペシャリストがいるという感じでした。

Kazuya

それに「横串」を刺そうというのが、我々が行っている「数理工学コンピテンシー」の活動です。金融工学や機械学習などのベースにある数理的なスキルを、一つの共通項として扱うという考えをベースに、昨年から活動を本格化しました。
数理能力のある人材を全社横断的に共有化することで、シンプレクスが発揮できる価値を最大化することに加え、お互いの技術を結集して何か新しい価値を生み出せないかを考えることも目的としています。また、既存メンバーに対して機械学習をはじめとした数理的な知識を身につけてもらえるように、全社にナレッジをシェアして人材を育てていく取り組みなども始めています。

CHAPTER 03 世の中に影響を与え、未解決の問題に答えを出すこともできるのでは。

Q:金融領域、また他のビジネス領域においてシンプレクスが数理工学を用いることでどんな可能性が広がっていると思いますか?

Kazuhiro

機械学習などオープンソースで使える先端技術が増えていることで、インダストリーを問わず企業がテクノロジーを活用して利益に繋げようとする発想が今や当たり前になってきています。システムを提供することができるという価値に加えて、数理工学的な要素を付加価値としていくことが求められるようになりました。
そうしたとき、先ほどの話にもあったように、我々数理工学コンピテンシーが中心となって全社に数理工学的なナレッジを展開しリソースを強化していくことで、シンプレクスの提供するソリューションの価値を高めていくことが重要になってくると考えています。

Kazuya

金融領域においては、特定領域のスペシャリスト同士がコラボレーションすることで新しい価値が生まれる可能性はあると思っています。実際に、デジタル化や決済方法の選択肢が増えたことにより非金融領域の事業会社が、様々な金融サービスを開始する事例が増えています。多くの金融ビジネスを手掛けてきた我々だからこそ、事業会社と協業することで新たなサービスを作っていけるチャンスがあると思っています。

Takuya

今まで見つけられていない価値を生み出すという話として、今から話すのは個人的な「妄想」の域を脱しない話ではあるのですが。
例えば電力会社が発電をするときに石炭、石油、太陽光、風力、原子力……などのエネルギー源の組み合わせを考えるのは金融領域のポートフォリオの考え方に類似するので、どのようなリスクがあるかについては金融工学を応用することで考えることができるんですよね。また、季節によって電力の売値が異なってくるというデータは、統計的な手法で分析を行うことで最適な戦略を考えることが可能なはず。効率よく安定的に発電するには?高く収益を得るには?二酸化炭素排出量を低減するには?といったことを多次元の最適化問題として捉えれば金融工学のモデル化と機械学習のアプローチを用いることで解を得られるんじゃないか、と。
そんな風に、世の中にある問題を、複数の数理工学のアプローチを組み合わせることで解いていくことができるんじゃないか。そう考えれば、特定のビジネス課題を解決するだけじゃなく社会課題の解決に影響を与えることも可能なんじゃないかって思うんです。

CHAPTER 04 文系でもOK?数字にアレルギーのある人は……

Q:数理工学エンジニアに向くのは、どんな人だと思いますか?

Kazuhiro

私は文系出身なんですが、その視点から言うと、わからないことや気になることが出てきたときに納得いくまで調べられて、それが苦にならない人ですかね。
お客さんの要望に応えていくためには、担当している業務の深いところまで理解し消化しておくことが必須になるので、必要な事柄を求められたタイミングでスピーディにキャッチアップしていく行動特性が重要です。そういう努力を怠らない人が向いていると思いますよ。

Kazuya

まあ、実際問題として、プログラムがちょっとかけたほうがスムーズかなと思います。マインドでカバーするのもそれなりに大変なので……。とはいえ、私も理系とはいえ生物系出身。PCもほとんど触ってこなかったので、新入社員研修ではハッパをかけられたほうなんですが(笑)。

Takuya

数学に得意意識はなくてもいいけれど、数字を見ることがアレルギーという人は向かないかなと思います。数学が得意だから価値を生み出せるという訳ではなく、さまざまなことを状況に応じて専門性を組み合わせて考えることができることに価値があります。なので、「機械学習だけやりたい、それ以外はやりたくない」というスタンスはあまり歓迎しないですね。数理工学というメタな視点に立って、お客さんの要望を形にしていくことが何より大切です。

Kazuhiro

あと、これは数理工学に限らずですが、シンプレクスではプロジェクト単位で仕事をすることがほとんどなので、他者と協力するということやチームでナレッジを共有しより良いものを作るという価値観に共感してくれる人でないと厳しいかもしれません。

Kazuya

難しいこと、逆境でも楽しめるマインドを持っている人と一緒に働きたいですね。世の中にある課題を解決することに挑戦していきたいので、高い壁を越えている最中にいろいろ頭を使う、その過程自体も楽しめる人と一緒にやっていきたいです。

――ありがとうございました。

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